MAKAN-魔鑑

貴女という名の魔術鑑定

WICCA GARDEN

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WICCA GARDEN-魔女の庭

第6章 魔法のマンドレーク


マンドレーク(和名:マンダラゲ)は有毒の麻酔性植物で、中世の魔術や魔法と関連が深い。一般及び薬草植物の中では、最も強力な魔力を持つとされ、 金星(または水星)の影響を強く受け、どんな魔法にも強力な魔力を発揮する。学名は、Mandragora officinariumといい、もともとは地中海諸国原産である。 マンドレークという名前の由来であるが "man-dragon" つまり、人竜(人の形をしたドラゴン)"という意味である。

ナス属の近類で、紫色、または緑色がかった黄色の花を咲かせる。実は、薄暗い夜明けになると青く光って見える。二股に分かれた太い根は、人体、または男根のような形をしている。茎のない多年性薬草で、花は強烈で不快な臭いを発し、奇妙な形をした根は、かつては麻酔薬や睡眠薬に用いられていた。古代ギリシャ・ローマ時代では、手術や焼灼(しょうしゃく)を行う際の麻酔薬としてマンドレークの根のエキスが用いられた。マンドレークのどの部位も、ポーション(魔女のハーブティー)、ブルー(魔女の調合液)、フィルター(ハーブを原料とする秘薬)に使う場合は、常に充分に注意を払わねばならない。非常に有毒な植物なので、使用法を誤ると、病気や精神錯乱などの極度な興奮状態に陥ったり、長期間苦しんだ末、命を落とすことがある。


本物のヨーロッパ産マンドレークは、北アメリカでは採取がかなり困難で、値段もかなり高い。北米の魔術グッズショップやハーブショップで販売されているマンドレークは、実際はメイアップル(和名:ポドフィルム、学名:Podophyllum peltatum)という植物である。こちらは北米原産で、ヨーロッパ産マンドレークとは全く異なる。「アメリカン・マンドレーク」とも呼ばれ、一般的に、白い垂れ下がった一重の花と、卵型の黄色い実がなる。熟した実の果肉は食べられるが、根、葉、種は、ヨーロッパ産マンドレークと同様、死にいたるほど有毒である。マンドレークには性別があり、メスの根は、女性の体のような形をしており、ウーマン・ドレークとも呼ばれる。一方、オスの根は、男性の体のような形をしている。両方とも、同じくらい強力な魔力を持つが、たいていの女魔女はメスの根を使う。特に、恋愛や性に関連する魔法にはメスの根が使われる。マンドレークの根は、恋の魔法に用いるハーブの中では最も強力で、かつ最も危険なハーブだ。男根のような形をしたものには、優れた媚薬効果があるとされ、猛毒であるにも関わらず、かつては、魔女の恋の妙薬の主原料であった。大プリニウス(百科事典)には、「男根の形をしたマンドレークを見つけると、精力が衰えない」と記載されている。マンドレークの根は、東洋では、性的興奮剤としてハーブショップや薬局でごく簡単に手に入る。植物そのもの、またはパウダー状のものも売られており、たいてい、非常に高価である。




Ⅰ. 金曜日に、白ワインを入れたボウルにマンドレークの根を浸し、それを赤いシルクとベルベットで出来たお守り袋に入れて持ち歩くと、精力がアップし、異性にもてるようになる。

Ⅱ. 枕の下にマンドレークの根を置くと、どちらか一方がそれほど相手にぞっこんでなくても、情熱的な一夜を過ごすことができる。

Ⅲ. アラブ諸国では、精力が衰えてきた男性の多くが、精力強化のお守りとしてマンドレークの根をネックレスにして身につける。

Ⅳ. 伝説によると、特にメスのマンドレークの根を食べたり、お守りとして持ち歩くことによって女性の妊娠能力も促進されるという。子供がたくさん欲しい女性達や男の赤ちゃんを授かりたい女性達は、何百年も前からこの方法を実行している。

Ⅴ. 創世記によると、ヤコブの妻、ラケルは不妊だったが、マンドレークの根を食べてジョセフを授かったという。これは、マンドレークの根が古代から懐妊のお守りであったという言い伝えは聖書の時代にさかのぼるということを明らかに示すものだ。

Ⅵ. また、ある民話によると、マンドレークの実(ある国では、「愛のりんご」として知られている)を聖アグネス前祭(1月20日)に恋する女性が好きな男性にあげると、その男性は彼女に恋をするという。

Ⅶ. パウダー状にしたメスのマンドレークの葉を、グラス1杯の赤ワインに入れたものは、強力な魔女の媚薬とされている。(情熱的なセックスには赤ワインを、ロマンチックな恋には白ワインを使用)


恋の魔法はもちろん、古くから、マンドレークの根は未来を予言する力を持つと言われている。

中世の魔術と魔法に関する本には、人間の形をしたマンドレークの根(オス、メスに関わらず)に質問をすると、Yes,No,と首を振り教えてくれるという。このような文献は一冊だけでなく、数多く存在する。正しく呪文を唱えれば、マンドレークは実際に声を発し、または、テレパシーを発して占い師に予言させることができる。マンドレークはこのようにして、未来を予言し、秘密を明らかにする魔力も持っているのだ。新米の魔術師がマンドレークの根に気に入られると、マンドレークは、 その魔術師に誰も知らない魔法を教えてくれるという迷信もある。多くの現代魔女達は、超能力を高める呪文や儀式にマンドレークを用いている。

Ⅷ. モージョ(お守り袋)に入れて持ち歩き、またはネックレスにして身につけると幸運を招く強力なお守りになるという。

Ⅸ. また、箱の中にマンドレークとお金を入れると、そのお金は一晩で2倍に増えると言われている。

中世においては、魔女達はパウダー状のマンドレークの根を原料とする特別な軟膏(クリーム)を使っていたと広く信じられていた。これらの軟膏は、「魔法の油」と呼ばれ、体に塗ると、魔女達は空を飛んだり、姿を隠したり、動物や鳥に化けることが出来たとされている。もちろん、実際に飛んだり、透明人間になったり、化身したりということはなかったが、おそらく、幻覚作用のある軟膏が皮膚から吸収されることで、魔女達は幻覚や興奮を起こし、実際に飛んだような感覚に陥ったのだろう。

アラビア諸国では、マンドレークは「悪魔のろうそく」または「悪魔の灯火」と呼ばれている。実際は、持続光を発する虫によって、闇夜でマンドレークの葉が光って見えるのだが、昔の人はこれを悪魔の仕業だと思ったためにこの名がついたという説がある。

何世紀以上も前から、世界中各地にはさまざまな別称がある。マン・ドラゴン(人竜)、黒魔術師、小人、悪魔の根、小さな絞首刑の人などである。「絞首刑の人」という別名は、洗礼を受けていない犯罪人や悪魔の血が流れる犯罪人が死刑台にかけられると、血液や体液(精液、涙など)が滴り落ちた地面に生えるという中世伝説からきている。マンドレークの根を引き抜くときは、必ず夜行うこと。(できれば満月の夜が好ましい)また、実際にマンドレークを使用する魔術師本人が引き抜かねばならない。そうでないと、マンドレークは魔力を発揮しない。魔女、黒魔術師、または悪魔と関連を持つ人以外の人間が近づくと、マンドレークの根は恐ろしい悲鳴をあげるという伝説もある。マンドレークは、サムハイン祭(ハロウィーン)、サバト(魔女集会)の伝統的な儀式に用いられるハーブで、アフロディーテ、ディアナ、ヘカテなどの異教徒神、そして、アルラウネ・メイデンで知られる伝説のチュートン(現在のドイツ)の女魔法使いにとっては非常に神聖なハーブである。



悲鳴をあげるマンドレークの伝説

ある中世の伝説では、マンドレークを引っこ抜くと、血を吹き出しながら、耳をつんざくような悲鳴をあげると言う。同伝説によれば、マンドレークの根を地面から引き抜いた者(男女を問わず)は、マンドレークが恐ろしい悲鳴をあげると同時に、激しく苦しみながら死んでしまうと言う。この興味深い伝説の発祥地や、由来については知られていない。

魔法使いや魔術師達は、長い時間をかけて、安全なマンドレークの採取方法をいくつも考案した。そして、最も一般的となった方法が以下である。

まず、マンドレークが抜けてしまわない程度に周りの土をスコップなどで掘る。そして、犬の首に縄を巻きつけ、ロープの片端をマンドレークにくくりつける。犬の飼い主は、悪魔のような悲鳴を聞かないように綿の耳栓をし、耳を保護する。それから、飼い主はその場を離れ、犬にエサを見せて呼び寄せる。犬が飼い主のもとに走ると、縄にくくりつけたマンドレークが引っこ抜かれる。犬は悪魔の悲鳴を聞いて即死するが、その犬が死ぬことで、マンドレークの根は飼い主を悪魔から守ってくれるという。

キルケの植物:
ホメロスの第二叙事詩「オデッセイ」では、キルケという女魔女がマンドレーク根の汁でつくった魔法の秘薬を用いたとされている。最初はオデッセイの部下に恋の魔法をかけ、次に彼らを豚にしたという。彼女は、強力な魔法の毒で美しい水の妖精スキュラを、6つの頭を持つ醜い海の怪物に変えた。スキュラは、近づくものすべてを捕えて餌食にしたという。その魔法の毒に使われたのもマンドレークであった。古代ギリシャでは、マンドレークのことを「キルケの植物」と呼び、この美しく恐ろしいエーゲ海の妖怪に供えたという。以来、マンドレークは、魔女や魔法に関連深い植物になった。


マンドラゴラ

ハーバリスト達は、マンドレークを原料とする麻酔薬のことを「マンドラゴラ」と呼ぶことがある。かつて、詩人達はマンドレークの植物全体のことを「マンドラゴラ」と呼んでいたが、現代では「マンドラゴラ」という言葉はほとんど使われなくなった。民話によると、「マンドラゴラ」という言葉は、マンドレークに関連する妖精や悪魔を指していた。(特に、人間の形をしたマンドレークの根)この妖精達は、小さな髭のない黒人の男に化け、一般の人々の間を密かにうろついては、黒魔術師の命令でいたずらをしたり、不幸をもたらす使い魔だと言われている。黒魔術師の命令で悪さをする以外は、マンドレークの根に隠れ潜むマンドラゴラもいる。マンドレークの植物そのものに化けるマンドラゴラもある。また、普段は目に見えないが、マンドレークの根に特別な呪文を唱えると姿を現すマンドラゴラもいる。

面白いことに、これらの悪い精や悪魔は、メス・オス両方のマンドレークの根に潜んだり、マンドレークの根に化けることができるが、マンドラゴラは常に男と決まっている。マンドラゴラに関する言い伝えと魔力は、ドイツ、アラビア、中世時代の各国において広く信じられていた。呪文を唱えた魔術師の願いとあらば、どんな人、動物でも狂わせることが出来ると多くの人が信じていた。また、この呪いから身を守る数多くのお守りも考案された。魔女狩りが行われていた時代、マンドラゴラは、猫やカエルと同様、魔女や魔法使いと親しい小鬼や悪魔であるとされていた。マンドレークの根を持ち歩く者は確実に魔女であり、マンドレークはいとも簡単に、男女年齢に関わらず、また、魔女、普通の人々を問わず、人の命を奪うことができるとされていた。



WICCA GARDEN-魔女の庭 ©Gerina Dunwich
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